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斎藤英次商店本社

廃棄物アート「ACTA+」のポップアップイベント見学レポート

廃棄物に新たな価値を。消費と廃棄がイコールにならない世界に

お世話になっております。
㈱斎藤英次商店マーケティングチームです。
今回は久々に、大人のecoアカデミー第3弾。
廃棄物アートイベントの見学レポートをお送りします!
 
先日(2024/10/7)、大阪高島屋で開催されていた
廃棄物アートのポップアップイベント「ACTA+」(アクタプラス)の見学に行ってきました!
現代アート的な作品から、より普段使いしやすい実用的な工芸品まで、
ブース内に廃棄物アートのエッセンスが凝縮され、とても新鮮な経験ができました。
 
実は10/15(火)が最終日だったのですが、
今後も色々なところでイベント実施されているそうなので、
もし機会がありましたらぜひ一度足を運んでみてください!

【イベント情報】
●ACTA+ポップアップイベント
期間:2024年10月9日(水)~15日(火)
場所:大阪高島屋 6F 中央エスカレータ横 POPUP STATION
住所:大阪府大阪市中央区難波5-1-5
運営HP:https://www.chutoku-g.co.jp/pressroom/news/32781

 
以下には、イベントのコンセプトや出品作品についてと、
廃棄物アートの今後の展望について、個人的な考察をまとめました。
筆者は大学時代に美術を専攻していた程度のアマチュアですが、
イベントは廃棄物とアートの関係性を改めて考えさせられるとても興味深い内容だったので、
よろしければお付き合いいただけると嬉しいです。
 

今回のイベントの概要

 
こちらのイベントは、(株)中特ホールディングスが立ち上げた新事業、
「ACTA+(アクタプラス)」の紹介と商品販売を行う、ポップアップイベントです。
ACTA+では、世界各国のクリエイター500人あまりと連携し、
廃棄物に新たな価値を見出したアート作品やプロダクト再生に取り組んでいるとのこと。
 
会場では、エスカレータ横のスペースに、50種類ほどの作品が並んでいました。
壁面絵画やオブジェのような現代アート的作品から、
カキの殻や牛乳パックをアップサイクルしたより実用的な雑貨類まで、幅広いジャンルの作品を見ることができます。

価格帯も、1個数千円から数十万円単位と幅があり、お手ごろな価格のものもあるので、
見学中にも何点か購入されていく様子を目にしました。
 
普段これらの作品はネットショップで販売されているそうなので、
興味を持たれた方はぜひこちらも覗いてみてください!
ネットショップ:https://acta-plus.com/
 
 

印象に残った作品

 
続いて、個人的に印象に残った作品を2点、ご紹介します。
どちらも素材の性質に独自の解釈や加工を加えていて、
モノとは何か、価値とは何かを考えさせられるとても刺激的な作品でした。
 

紙パックのアップサイクル

 
1つ目は、ミルクぱく子さんの牛乳や豆乳の紙パックで作られた作品。
紙パックを使って名刺入れやバッグ、アクセサリーなどを制作されています。

写真右手側にある《豆乳パックでつくったバケツバッグ》や、中央手前にある《名刺入れ》などは、
紙パックの防水性を生かしつつ、紙を柔らかくこなした際に出来るしぼがデザインのアクセントになっています。
現地で実物を触らせていただきましたがとても丈夫で、バケツの取っ手や名刺入れの合わせもミシンでしっかり縫製され、
実際に普段使いしても問題無いとのこと。
豆乳パックのように、裏が銀の紙パックは溶解しづらくリサイクルに向かない製品ですが、
この作品のような使い方をすれば、より効果的に素材を活用出来そうです。
また、左手側にある《花束クラッチバッグ》では、さらにその表面に紙パックを使って作った繊細な花が飾られています。
丈夫さを生かしつつ、紙パックの素材としての面白さも感じられる作品です。
 
どの作品も、素材に向き合った技術とセンスの集大成でありながら、
アート作品としてだけでなく普段使いできる雑貨としても楽しめると思います。
日常的に手にすることで、その素材に思いをはせ、アップサイクルを意識するきっかけになるのではないでしょうか。
 

モノとは何かを考える

 
もう1つ、気になった作品が鈴木麻希子さんの《preparation》シリーズ。
会場には《preparation007》と《preparation020》が飾ってありました。(写真は020)

鈴木さんは、普段から「縫う」をテーマに様々なモノを縫い合わせた作品を制作されている作家さんとのこと。
縫うという行為の裏側にある明るみに出せない感情と、
いずれ捨てられてしまう廃棄物とを重ね合わせた視点からの制作は、非常に興味深いコンセプトでした。
こちらの作品群は額装されていて、先ほどのミルクぱく子さんの作品と違い、
手に取って実際に使う、というものではありません。
ですが、既存の製品を繋げ、また覆っている縫い糸の存在が、見慣れたマスクや紙ナプキンなどの既製品を、
新たな目で見直すきっかけになる作品ではないかと感じました。
 
既存の製品を縫い合わせるだけ、という一見誰でも出来そうな行為を敢えて行うこと。
そしてそれらをどう解釈し縫い繋げていくか、そこに芸術家としての視点が生きてくるのでしょう。
身近なモノ、捨てられてしまうモノでも、着眼点が変われば価値あるモノへ変わってゆく。
結局のところ、価値とは存在するものではなく、見出すものなのかもしれません。
 
 

アップサイクルアートの未来 ―可能性と不可能性―

 
さて、長くなりましたが、これらの作品を見ていると、
多くのアート作品にとって、材料が廃棄物であるかどうかは、
作品としての価値を貶めるものではないということがよく分かります。
 

廃棄物アートの可能性

 
むしろ、廃棄されるモノ、使われていたモノだからこそ、モノ自体がそれぞれにストーリーを持ち、
それを作家が作品にいかすことで相互の魅力がより高まるともいえるでしょう。
廃棄物が持つネガティブイメージも、作品として消化する中で一種の味・ブランドとして捉えることができるようになります。
 
しかし、廃棄物アートに限らず、アート作品の販売チャネル確立は、作家のセルフプロデュースによるところが大きく、
経済的に自立した活動に繋がりづらいのも現実です。
その点で、「正論を、憧れに」というACTA+の取り組みは、
素材が廃棄物であるということを一つのブランドとして捉え、受注と制作を結び付ける試みといえます。
これにより、廃棄物の価値を高めるだけでなく、
作家たちの持続可能性に向けた制作を支えるプラットフォームの一つともなるでしょう。
 
廃棄物であることをむしろ肯定的に捉える取り組みは、
現在の消費一辺倒な意識を改革する可能性を秘めたもの、といえるのではないでしょうか。

 

廃棄物アートの不可能性 そして展望

 
一方で、現在の廃棄物アートにおいて、一度に作品制作に使える素材数は決して多くは無く、
作れる作品数も手作業や需要の関係で多くは制作されません。
現在を生きる芸術家の中で、どれほど多くの作家が参画しても、
プロがアートという領域で救えるモノの数には、まだまだ限界もあると感じます。
ですが、それでも廃棄されるモノの数は増える一方です。
 
そして逆に、今制作に必要な素材を中古品や廃棄物で賄う機会は、減りつつあるようにも思います。
多くの場合、廃棄物に関わる業界の外からは処分の流れはブラックボックス化し、
決められたルートを行く中で一般の人の目に触れることはほとんどないでしょう。
そこへ、百均などで安価な新品素材が手に入りやすくなったことも加わり、
意図的に探さないと中古素材に出会いづらくなったように感じます。
最近でこそ、メルカリや中古ショップの発展で中古品を受容する潮流は広がっていますが、
それでも関心のない人が気軽に接する場はまだまだ少ないでしょう。
 
願わくは、今は廃棄物と呼ばれているモノたちが、新品のものと同じように市場に出回り、
多くの人の手に取られる世界になってほしいと思います。
例えば、百均で新品のものと同様に中古品も出回る。普通のスーパーで中古品が手に入る。
そんな未来がくれば、もっと多くの人が廃棄物の再活用を考えられるようになるのではないでしょうか。
 
人には皆、多かれ少なかれどこかにクリエイターの系譜が息づいているでしょう。
だからこそ、より多くの人の目に触れ、手に取る機会を得ることで、廃棄物の価値は再発見されやすくなります。
そして、手に取った人それぞれが、プロアマ問わず自身の生活にいきる素材として廃棄物に向き合う、
そんな世界を作り上げていきたいと感じました。
 
その先駆けとして、今回のイベントでは今を生きる芸術家たちの新進気鋭な取り組み、
そして着眼点を肌で感じることができました。
廃棄物に関わる業界にいるからこそ、できる情報発信や取り組みがある。
それを胸に刻み、当社でも様々な情報発信やコミュニケーションを行っていきたいと思います。
 
当社では、『知性とセンスで環境問題を解決へと導く「スマートなリサイクルカンパニー」』として、
廃棄物の可能性を引き出すパートナーになってくださる方を募集しております。
もし、今回の記事を読んで、廃棄物アートに興味を持っていただいたクリエイターやアートディレクター、
教育機関の方などがいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にお声がけください。
 
ぜひ一緒に、持続可能なモノとのつながりを築いていきましょう!

 
*写真出典:現地にて掲載許可をいただいた上で撮影
 
 
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